麻疹の流行
麻しん(はしか)の基礎知識と非常に強い感染力
麻しんは、麻しんウイルスによる急性ウイルス感染症です。感染力は現存するすべての感染症のなかで最強クラスであり、家庭内などの密接な接触環境では、免疫のない人が感染者にさらされた場合、約90%が感染すると報告されています。また、極めて広範囲において、同じ空間を共有するだけで感染する可能性があります。
麻しんウイルスは咳やくしゃみによる飛沫だけでなく、空気感染(飛沫核感染)も引き起こします。換気が不十分な室内では、感染者が退室した後もウイルスが空気中に漂い、感染リスクが継続するため注意が必要です。
| 感染力の強さ | 基本再生産数(R₀)は12〜18とされ、インフルエンザの約10倍の感染力に相当します。空気感染、飛沫感染、接触感染のいずれの経路でも感染します。 |
|---|---|
| 潜伏期間・感染期間 | 感染から発症までは平均10〜12日(7〜21日)です。発症の1日前から解熱後3日を経過するまでは、周囲への感染力があります。 |
| かかりやすい方 | ワクチン未接種の方、接種が1回のみの方、過去に麻しんに罹患したことがない成人が対象です。母親の免疫が弱まった1歳未満の乳児も含まれます。 |
麻しんの症状経過と注意が必要な合併症
麻しんの症状は段階的に変化します。典型的な経過を知ることで、早期発見に繋げることが重要です。
-
カタル期(第1〜4病日)
38〜39℃の発熱、鼻水、咳、結膜炎などが現れます。この段階が最も感染力が高い時期です。風邪との判別が難しく、口の中に白い斑点(コプリック斑)が見られるのが特徴です。 -
発疹期(第4〜5病日)
一度下がった熱が40℃前後まで再上昇し、耳の後ろや顔から赤い発疹が始まります。発疹は全身に広がり、この時期に最も体調が悪化します。 -
回復期(第7〜10病日)
合併症がなければ徐々に熱が下がり、発疹も消えていきます。ただし、回復後も数週間から数ヶ月は免疫機能が低下する免疫健忘(immune amnesia)という状態が続きます。
修飾麻疹(しゅうしょくましん)への注意
過去に1回のワクチン接種を受けている方が感染した場合、典型的な症状が出ない修飾麻疹となることがあります。発熱が軽度であったり、発疹が少なかったりと症状が軽いため見過ごされがちですが、感染力は保持されているため、周囲への二次感染には十分な注意が必要です。
重篤な合併症のリスク
麻しんは決して「子どもの軽い病気」ではありません。以下のような重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
| 肺炎 | 入院が必要になることが多く、特に乳幼児や免疫不全のある方で重症化しやすい合併症です。 |
|---|---|
| 脳炎 | 約1,000人に1人の割合で発症します。回復後も知的障害や麻痺などの後遺症が残るリスクがあります。 |
| SSPE(亜急性硬化性全脳炎) | 感染から数年後に発症する致死的な脳炎です。1歳未満で麻しんに罹患した場合に発症率が高まります。 |
| その他 | 中耳炎による難聴や、角膜炎による失明、妊婦が感染した場合の流産・早産などのリスクがあります。 |
